- (2024年3月28日更新)
自然の流れに身を任せながらも「自分らしさ」を活かす
介護をしたいと在宅ワークを志す人もいます。ただし、その両立が可能かどうかは、それぞれの環境により異なります。実際に介護を体験した先輩の話しを伺いながら、自分や家族を大切にしながら両立する方法を考えていきます。
プレシャスビーズジュエリーHANA代表兼デザイナー工藤嘉子さん。工藤さんは、ビーズジュエリーデザイナーとしてスタートしながら、実母の介護にもあたっていました。今回は、介護と在宅ワークをテーマに、工藤さんにお話をお聞きしました。
置かれている状況に合わせてキャリアを選ぶ
工藤さんが在宅での仕事に切り替えたのは、第三子をお腹に宿した頃。当時は、長男、次男は保育園、夫と自分は正社員という多忙な日々を過ごされていました。在宅就労に切り替えようと思ったきっかけについて伺いました。
「会社では、住宅のリフォームなどのインテリアデザインの仕事をしていました。女性が多い職場で、在宅で働いていた先輩もいて、自分もイメージがつかみやすかったですね。私が在宅就労に切り替えたのは2007 年で、当時住んでいた横浜から、地元である南房総市に戻り、CADを使った建築積算の仕事を請けていました。在宅といっても、会社専用のパソコンで、ほぼ毎日仕事があり、午前中にきた仕事を夕方までに仕上げるといった感じですから、時間の拘束もありました。在宅勤務といった方がイメージは近いですね」(工藤さん)
自宅で仕事を始めてから10 年が過ぎたころ、近くに住む母親の病気が悪化し、元々の癌に伴い、認知症も併発したそうです。
「くる時がきたな、と思いました。以前からも、水回りなどは手伝っていましたが、認知症の症状が現れてからは、だんだんと母の介護にさくための時間が増えていきました。病院の送迎のほか、急に具合が悪くなりすぐに処置が必要となることもありました。そのため、急ぎの仕事は請けられなくなりCAD の仕事はこれ以上継続できないと諦めました。母は2012 年に亡くなったのですが、その3 年前の2009 年には仕事を終了しました。会社に迷惑をかけたくなかったですし、母にもついていたかった。仕方がないことでしたし、新しいキャリアを見つけようと視野を広げていきました」
『自分で時間を管理できる職種』がポイント
在宅就労、介護をしながらも、工藤さんには、ビーズジュエリーという趣味がありました。
それも最初は趣味からのスタートだったといいます。
「はじめは、雑誌を見ながら作っていました。ただ、だんだんとその奥深さに惹かれていったのです。仕事としてやっていこうと思ったのは、2009 年『ブティック社 ビーズフレンド 準グランプリ』を秋、冬と続けて受賞できた頃。自信がつきプロとしての意識が目覚めてきました。当初は、介護を続けながらの日々でしたが、この仕事は同じ在宅でも自分で時間がコントロールできます。そのメリットは大きかったですね。介護と在宅ワークを両立したいと考えるのであれば、まずは『自分で時間を管理できる職種』であることが、重要なポイントになるのではないでしょうか」
現在(2014 年7 月)では、日本橋三越や阪急梅田など数々の百貨店からお声がかかり、出展を行う工藤さん。そこまでの道のりは試行錯誤の繰り返しだったといいます。
「趣味からプロへのターニングポイントは、『どうしたら利益を生み出せるか』を、きちんと考えられるようになることです。材料費、制作時間、交通費などを考えながら、闇雲に宣伝するのではなく、『自分の作品に合う場所』を見極めることも重要です。フラウネッツの講座では、技法だけでなく、私の体験を活かしたアプローチ法もお話していますので、興味がある方はぜひご参加ください」
オーダージュエリーを請ける際には、じっくりと相手のお話を伺い、イメージを膨らませていくという工藤さん。今後益々の活躍が期待される女性です。
★2014 年10 月1 日~5 日までは、フラウネッツの受講生による展示販売会が、原宿のデザインフェスタギャラリーで開催されます。
プレシャスビーズジュエリー HANA
代表兼デザイナー 工藤 嘉子 さん
【プロフィール】
趣味ではじめたビーズの世界だが、次第にその奥深さ、輝き、そしてリアルジュエリーでは、けして表現できない世界の虜になる。様々な技法で、オリジナル作品を作り続け、多くのビーズコンテストで高評価をいただく。得意とするのは針と糸を使用したビーズステッチとビーズ刺繍を用いた繊細な作品。また、ワイヤーを使用したゴージャスな作品も人気がある。制作コンセプトは、「気品あるジュエリー」。どことなくオリエンタル風でありながら、上品な作品は、身に着ける方に華を添える。豊かな自然から、鳥、花、生き物たちからインスパイアされることも多く、毎日創作活動に勤しんでいる。