閉ざされた空間が、こんなにも怖くなるなんて
電車に乗れない、閉じた空間が怖い——更年期に突然始まった過呼吸で、日常が変わりました。40代・50代の体調変化と、働き方をどう立て直したか。当事者が綴る体験記の第2回です。
当時の私は、閉ざされた空間にいることが、どうしても耐えられなくなっていました。
いちばんわかりやすいのが、電車や飛行機です。
どんなにすいていても関係ありません。乗った瞬間から、「ここからすぐには出られない」という感覚にとらわれてしまうのです。
頭の中には、いつも同じ言葉が浮かびます。
「もしここで過呼吸になったらどうしよう」
そう考えた途端に、息が浅くなり、動悸がしてきて、10分ももたない。
新幹線はもちろん、急行電車ですらぎりぎり。各駅停車で、いつでも降りられる状態でなければ乗ることができませんでした。
やがて、エレベーターにも乗れなくなりました。
サンシャインの展望台に上がる、あの星空のような演出さえも、逃げ場のない空間に感じてしまい、ただただ怖かったのを覚えています。
仕事先にたどり着くだけで精一杯だったことも……
幸い、取材の仕事で「完全に閉じ込められる」ような状況はありませんでした。
それでも、現場に向かうまでが一苦労です。
各駅停車を乗り継ぐか、あるいは歩く。 時間がかかってもいいから、とにかく自分が耐えられる方法を選ぶしかありませんでした。
電車に乗ること自体が怖くなっていたため、移動はいつも慎重でした。
各駅停車を選び、ひと駅ごとに「ここで降りられる」と自分に言い聞かせる。
それでも不安が強いときは、途中で何度もホームに降りて、深呼吸をしてからまた乗り直すこともありました。
どうしても乗れない日は、無理をせずに歩く。
遠回りでも、時間がかかっても構わない。
とにかく「自分が耐えられるかどうか」が、すべての判断基準になっていました。
周囲から見れば、少し非効率に見えたかもしれません。
けれど当時の私にとっては、それが精一杯の選択でした。
更年期は「心」ではなく「身体」に現れた
私は、更年期というと、「イライラする」「気持ちが不安定になる」といったイメージを持っていました。
顔から突然あふれ出すような汗。
止まらないホットフラッシュ。
ふわっと足元が揺れるような眩暈。
感情が乱れるというよりも、身体が先に限界を迎えてしまう。
だからこそ、誰かに当たる余裕もなく、ただ静かに自宅でやり過ごすしかありませんでした。
「この状態は、いつまで続くのだろう」
「私は、この先どうなってしまうのだろう」
そんな不安ばかりが、頭の中を巡っていました。
通い始めた産婦人科で処方されたホルモン治療剤。
薬を手にしたとき、ほっとした気持ちがなかったわけではありません。
けれど、それ以上に強かったのは、
「これを、いつまで飲み続けることになるのだろう」という不安でした。
私を少しラクにしてくれた、いくつかの対処法

すぐに症状がなくなるわけではありませんでしたが、 「どうすれば少しラクになるのか」を、自分なりに探すようになりました。
まず、やってみて効果を感じたのが、飴をなめることと、水を飲むことです。 不思議なことに、お茶ではだめで、水でないと落ち着きませんでした。
口の中に何かあることや、少しずつ水を飲むことが、 乱れそうになる呼吸や気持ちを、ゆっくりと元に戻してくれるような感覚がありました。
呼吸も意識的に整えるようにしました。
吸うことよりも、吐く時間を長くする。
それだけで、少しずつ身体の緊張がほどけていくのを感じました。もうひとつ、大きかったのは、家族の存在です。
土日などは、夫が気を配ってくれて、 しんどくなったときにはすぐに人の少ない場所や、
落ち着ける場所へ移動させてくれました。
そして、不安に引っ張られそうになると、
あえてくだらないことを言って、笑わせてくれるのです。
その「しょうもなさ」に救われることが、何度もありました。
アタマが指令を出しているようで、考え方を切り替えると、
自然に呼吸が整ってくるのです
振り返ってみると、こうした小さな積み重ねが、
少しずつ自分をラクにしてくれていたのだと思います。



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